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<<   作成日時 : 2006/02/19 17:30   >>

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画像「エイリアン」や「キングダム・オブ・ヘブン」などで知られるアクション映画の巨匠、英国人リドリー・スコット監督が1982年に撮った米国作家フィリップ・K・ディック原作の近未来SF映画「ブレードランナー」(米・香港、117分、ワーナー映画配給)。この映画はディックの思想性もさることながら、脚色や美術など素晴らしい映画的解釈を施しており、まれに見るポリシーをもったSF映画の傑作だ。同映画の劇場公開時にはさほどヒットしなかったが、ビデオ化されてから、カルトムービーとして人気を獲得しており、S.キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」(米、68年)と同様、SF映画史上における金字塔を打ち立てた。

物語は2019年11月の米国ロサンゼルスが舞台で、このころ,地球では火星などの宇宙へ進出していたが、植民地の惑星から人造人間のレプリカント4体が脱走、地球へ逃亡した。これに対しレプリカントを抹殺すること仕事であるブレードランナーの一人、デッカード(ハリソン・フォード)は警察から同レプリ処理の依頼を引き受けた。彼は捜索中にレプリ製造のタイレル社を訪れ、タイレル博士(ジョン・ターケル)と面会するとともに、謎の美女レイチェル(ショーン・ヤング)と出会う。実は彼女はレプリカントだった。

デッカードはまず、街のショーパブでスネーク・ダンスを踊っていた女性レプリカントの一人、ゾーラを射殺する。その直後、彼は男性レプリに命を狙われるが、レイチェルに救われる。デッカードとレイチェルは急速に親密な仲となり、彼のアパートで二人は結ばれる。このあと、デッカードは女性レプリ(ダリル・ハンナ)を倒し、最後にリーダー格である男性レプリのバッティ(ルトガー・ハウアー)と対決することになるのだが……。

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ここで、SF映画史について俯瞰(ふかん)してみよう。世界で最初のSF映画とされる1920年代に製作されたフランスの「月世界探検」を皮切りに、戦前では「メトロポリス」(26年)や、「キングコング」(33年)などの作品がつくられた。戦後に入ると50年代においてハワード・ホークス監督の「遊星よりの物体X」(51年)や、「宇宙戦争」(52年)、「空飛ぶ円盤地球を襲撃す」(56年)など荒唐無稽な″宇宙もの″が中心に製作された。ただ、50年代末期につくられたネビル・シュート原作の「渚にて」は異色作である。この作品は核戦争の恐怖を描いている。つまり、当時米ソの冷戦構造を背景に、核時代がもたらす影響をSF映画界は敏感に読み取っていた。

同様に60年代に入ってからもS.キューブリックは「博士の異常な愛情」という作品で核時代をブラック・コメディーの形で批判的に描いた。また、同年代にはヌーヴェル・ヴァーグの旗手、ジャン・リュック・ゴダール監督が異色のSF映画「アルファヴィル」、フランソワ・トリュフォー監督がレイ・ブラッドベリ原作の「華氏451」などを発表しており、SF映画により思想性をもたらした。さらに極め付けはキューブリックの「2001年宇宙の旅」である。この作品でキューブリックはSF映画に自身の哲学性を盛り込んだ。60年代では従来の″宇宙もの″″探検もの″などエンターテイメント作品がつくられる一方、次第に内容的な深化をみせた。

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このような流れに呼応して、70年代に入ってから、旧ソ連の巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督は「惑星ソラリス」「ストーカー」など芸術性の高いSF映画を発表。また、77年のスティーヴン・スピルバーグ「未知との遭遇」、同年のジョージ・ルーカス「スターウォーズ」も今後のSF映画の方向性を示すものとしてエポック・メイキングな作品となった。80年代から今日にかけては、フィリップ・K・ディック(1928−82年)原作ものが一つの潮流となっている。「ブレードランナー」もそうだが、例えば「トータル・リコール」「クローン」「マイノリティ・リポート」「ペイチェック」など数多くの作品が製作されている。だから、「ブレードランナー」はディックものの映画の先駆けとして記念碑的な作品といえる。最近の「アイランド」や近年の「ガタカ」「マトリックス」などの作品も近未来を背景にクローン人間が登場するなど、ディック的なテーマを引きずっていると言っていいだろう。

さて、「ブレードランナー」の原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(68年、ハヤカワ文庫)だが、この小説を読んでみると、映画との違いがよく分かりとても興味深い。レプリカントかどうかの検査は、映画では冒頭に出てくるが、小説では途中から描かれ、時にそれがユーモラスに表現されている。また小説では人工動物に絶えず焦点を当てている。これは、核戦争後の地球において、いかに自然的なるものが重要になってくるかというディックの思想の表れであろう。映画では人工フクロウのカットを挿入することで、その考えの一端を反映している。この小説では、デッカードの所属する警察と突然、もう一つの警察が出現し、どちらが虚であり実なのか、読んでいて一瞬、混乱を覚えてしまう。やはりディックのもつ小説作法としての巧みさに唸(うな)ってしまう。

画像さらに小説はラスト近くのデッカードとレプリの対決シーンが、あっさりと描かれているが、この部分には映画を先に見て感銘を受けた筆者にとって物足りなさを感じる。しかし、ドラマとしての流れ・演出を考えた「映画」としては仕方のないところであろう。小説ではムンクの絵画「叫び」やオペラ、モーツアルトの音楽など芸術に関する分野が数多く登場し、SFとしては稀有(けう)な作品で、SF小説家にはとどまらない、芸術家・文化人としてのディック像がかいま見える。小説オリジナルのものとして宗教家マーサーが登場し、TVタレントのバスター・フレンドリーと対決する。結局はフレンドリーがマーサーの欺瞞(ぎまん)・偽善性を暴露するのだが。ディックはこれらを通して宗教をはじめとする救済について言及する。それは、絶えず人間の本質・真実とは何かということをバックにし、人間の現実存在(実存)論を結果的に前提としている。

画像映画「ブレードランナー」では、原作のエッセンスを抽出し、映画的な加工でフィルム・ノワールおよびハードボイルド風に演出し、見るものに対し絶えずインパクトや寂寥感(せきりょうかん)を与える。美術担当のシド・ニードによる近未来の風景は圧巻だ。最終戦争後、環境が著しく破壊され、アシッド・レイン(酸性雨)が降りしきるなか、巨大ビル群の広告塔には「強力ワカモト」のCMメッセージが、芸者ガールの映像とともに流れていく。オリエンタルな雰囲気をかもし出し、酸性雨の下では多国籍語を話す人たちが、奇妙なパラソルを持ちながら漂いさまよう。そのような街中で、ハリソン・フォードは″うどん屋″の屋台でヌードルを4つ注文する。「それは多いよ。2つでいいよ」などと奇妙な日本語を話す東洋人と会話を交わしながら。

画像また、同映画ではレプリ役のルトガー・ハウアーの存在が異彩を放っている。まさにキャスティングの妙というべきだろう。ショーン・ヤングのレプリ役も清楚(せいそ)な感じでいい。ダリル・ハンナもある種のグロテスクさを表し適役だ。さらにレプリ女性のダンサー、ゾーラが街中でヴァンゲリスの音楽が流れるなか、フォードに射殺されるスローモーションのシーンはエモーショナルだ。まるでアクション映画の鬼才、サム・ペキンパー監督の往年のシーンを思い出さずにはいられない。ブレードランナーのH・フォードとレプリのS・ヤング、つまり人間と人造人間とのラブシーンが何ともやるせなく美しく、思わず目頭が熱くなってくる。

ラスト直前の対決シーン後、レプリカントであるルトガー・ハウアーは本当の人間になりたがっていたものの、自らの運命を受容し静かに死を迎えていく。これを見守っていたH・フォードは次のような、小説および映画のテーマと直結するセリフ(完全版)を残す。「レプリカントは、自分のことを知りたがっていた。″自分がどこから来てどこへ行こうとしているのか″を。これは人間も同じなのだ……」。

[5段階評価]……☆☆☆☆

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You tube「Blade Runner」リンク先
http://jp.youtube.com/watch?v=C9KAqhbIZ7o
http://jp.youtube.com/watch?v=uJrOVLEUBgw

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オン・ザ・ブリッジ
2006/02/22 10:02
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Cahiers du cinema
2006/02/22 12:58
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阿部健一郎BLOG
2006/02/23 12:40
『ブレードランナー』
ディレクターズカット ブレードランナー 最終版 ...続きを見る
紫式子日記
2006/02/25 03:28
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ORGANIC STONE
2006/03/15 20:44
BraveDVD:「ブレードランナー」
(リンクはサントラCDのものです。)もはや名作と言うべき一作である。リドリー・ ...続きを見る
すばらしき新世界
2006/05/15 17:20
『ブレードランナー』を見た
『ブレードランナー』は好きな映画で、初めて買ったLDが『ブレードランナー/完全版』だった。 DVDのディレクターズカット版も勿論持っているが、なぜか二つある。なぜだ? ...続きを見る
宮ネコ日記
2006/05/16 01:29
??????????????????????????????????1992??
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????
2006/05/16 10:52
ブレードランナー 最終版
ブレードランナー これまた不思議な映画です。 地球に逃げてきたレプリカントを殺る賞金稼ぎブレードランナーの話なんだけど、 これがまた凄いポエジーが炸裂した美しい映画なのよ。 人間そっくりなレプを追って始末していくと聞いたら、 胸躍るようなSFアクション.. ...続きを見る
カフェビショップ
2006/05/16 22:35
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Mani_Mani
2006/06/09 00:45
「ブレードランナー」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」P・K・ディック原作 ワーナー・ホーム
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内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。TBありがとうございました。『ブレードランナー』は『2001年宇宙の旅』『攻殻機動隊』と並んで私のSF映画ベスト3に入る映画です。緻密で美しい世界観、人間とは何か問う深い思想性、この映画は時代を超越した魅力がありますね。
とろとろ
2006/02/22 10:08
とろとろさん、よーこそ「シネマ・ワンダーランド」の世界へお越しいただき、ありがとうございます。感謝です。

たしかに、この映画はおっしゃる通り、<時代を超越した魅力>がありますよね。やはり、P・K・ディックとリドリー・スコット、ヴァンゲリス、シド・ニードの偉大さなどを感じずにはいられません。
「攻殻機動隊」という作品は未見なのですが、今度ぜひ見てみたいなあ、と思います。
では、では今後ともよろしくお願いします。また、ぜひこのブログに遊びに来てくださいね。
D.ギルモア
2006/02/22 21:58
はじめまして。
コメント&TBありがとうございますっ。
記事楽しく読ませて頂きました。ゴダールは大好きな監督なんです。トリュホーや、ロメールなども大好きです。
記事楽しく読ませて頂きました。
これからも、度々訪れさせて頂きます。どうぞ宜しくお願いしますっ。

カイエ・デュ・シネマ
2006/02/23 06:41
カイエ・デュ・シネマさん、よーこそ当ブログにお越しいただきありがとうございます。また、ぼくのつたない記事について、″楽しく読ませて頂いた″とのこと、さらに感謝・感激しております。
さて、あなたの大好きなゴダールですが、初期のものでは、「女と男のいる舗道」「男性・女性」、近年では「決別」が気に入っています。トリュフォーでは、やはり長編初作品の「大人は判ってくれない」。ヌーヴェルバーグで一番大好きな監督エリック・ロメールのものでは、「緑の光線」がベストで、次いで「モード家の一夜」「海辺のポリーヌ」「冬物語」「友だちの恋人」などが結構好きです。
それでは、また当ブログに遊びに来てくださいね。また、今後あなたの作成するレビューで、ぼくの書いたものがあったら、ぜひTB&コメントを送ってくださいね。
D.ギルモア
2006/02/23 22:10
TBありがとうございます。リドリー・スコットではこの『ブレードランナー』も大好きですが、『デュエリスト』『誰かに見られている』も結構好きです。朽ち果てた未来都市に降る夜の雨がとても冷たそうで良かったですね。あ、ちなみに僕にとっても『緑の光線』は生涯の1本です。
cassavetes69
2006/02/26 08:59
cassavetes69さん、はじめまして、よーこそ、「シネマ・ワンダーランド」の世界へお越しいただき、ありがとうございます。
「ブレードランナー」は、おっしゃる通り<朽果てた未来都市に降る夜の雨>はいいですよね。やはり、シド・ニードの美術感覚には偉大さを感じます。また、リドリー・スコットは「エイリアン」をはじめとして、「1492コロンブス」「グラディエーター」「キングダム・オブ・ヘブン」「マチスティックマン」など硬派で男性的なエンタメ作品を撮る監督、という印象をもっています。
エリック・ロメールの「緑の光線」ですが、ぼくもやはり、<生涯の一本>で、こんな映画がつくれるロメールの才能とセンスには脱帽しています。
では、では今後ともよろしく、また当ブログに遊びに来てくださいね。
D.ギルモア
2006/02/26 15:55
http://androgyniu.exblog.jp/
トラバありがとうございました。
最近になって誰かに言われたのですが、ブレードランナーとブラックレインって、うどん(蕎麦かな?)を食べるシーンがかぶっているんですよね。。。たしか?
a/g
2006/02/26 20:44
a/gさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
「ブレードランナー」の中で、H.フォードがロサンゼルスを舞台設定としたチャイニーズタウンの屋台の″うどん屋″で、ヌードルを注文して食べるシーンはひどく印象に残り、明確に憶えているのですが。ただ、「ブラックレイン」は昔に見たのですが、あまり印象がなくて、うどんを食べるシーンがあったのかどうか憶えていません。ごめんなさい。
ただ、松田優作の決闘シーンだけが印象に残っている程度なのです。
これに懲りずにまた当ブログに遊びに来てくださいね。では、では。
D.ギルモア
2006/02/26 21:47
TBありがとうございました。
「ブレードランナー」と「ブラックレイン」は確かに良く似たところがあって、後者は大阪ロケであの蒸気立ちこめる猥雑な街路を撮ってしまったという、ある意味前者をこえる表現だったと思います。
というわけで?こちらからもTBさせていただきます。よろしくお願いします。
manimani
2006/06/09 00:44
manimaniさん、よーこそ、「シネ・ワン」の世界へいらっしゃいませ!!またTB&コメントありがとうございます。

ぼくは、「ブラックレイン」はかなり昔に見たので、内容をよく覚えていないので、すいません。でも、猥雑な街路といえば、「ブレードランナー」の、あのうどん屋のシーンが印象に残っていて忘れられません。また、あの奇妙なパラソルも。

こちらこそ、よろしくお願いします。また、当ブログに遊びにきてくださいね。
D.ギルモア
2006/06/09 02:16
未来都市と言えば、洗練された硬質なイメージがあったが、それを覆して猥雑なイメージを映像化したブレランは革命的な傑作でしたな。
goldius
2006/07/23 20:17
goldiusさん、再訪ありがとうございます。また、TB&コメント感謝です。

たしかに、この映画の未来都市イメージは、たまりません。核戦争後に、酸性雨が降るなか、人々は奇妙なパラソルをさし、多国籍後を話しながら、街中を漂う。そんななか、奇妙な東洋人が経営するうどん屋の店主はH.フォードに対し「二つでいいよ」などと言う。やっぱ、美術を担当したシド・ニードの功績といったものは、計り知れないものがありますよね。

それでは、またよろしくです!!
D.ギルモア
2006/07/23 23:29
コメントありがとうございました。リドリー・スコットはともかく光の使い方がすごいですね。歌舞伎町はガイジンにとってSFですね!
hyuma
2006/08/16 22:48
hyumaさん、よーこそ、「シネ・ワン」の世界へいらっしゃいませ!!また、コメントありがとうございます。

リドリー映画は、確かに「エイリアン」にしろ、「ブレラン」にしても、光の使い方が巧みですよね。また、「ブレラン」に出てくる街の猥雑さは新宿歌舞伎町に通じるものがありますね。

それでは、また当ブログにぜひ遊びに来てくださいね!!
D.ギルモア
2006/08/18 00:34

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