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<<   作成日時 : 2006/07/16 01:01   >>

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画像「ミツバチのささやき」や「エル・スール」などの作品で知られるスペインのビクトル・エリセをはじめ、ジャームッシュ、ヴェンダース、ベルトルッチ、ゴダールなど世界の15人の映画作家が時をテーマに上映時間10分の枠でつくられたオムニバス映画「10ミニッツ・オールダー」(2002年、英・独・西など)。この映画は、15人の監督がそれぞれ個性・感性を生かした独自の映像で″競演″を繰り広げている。本作品は「人生のメビウス」(92分)および「イデアの森」(106分)の2本に分かれている。

画像「人生のメビウス」では、10年に一度しか映画を撮らず寡作で知られるビクトル・エリセの「ライフライン」が出色の出来だ。ストーリーは第2次世界大戦前のスペインの山村で、ベッドに眠っている新生児のお腹から出血、10分間が経過し、いかにそれを救出するかといった内容。出産を終えたばかりの母親が赤ん坊の隣で熟睡している。この家の近くでは子どもが自分の腕に時計を描き遊んでいる。また近くに停められた自動車内では4人の子どもが運転ごっこをしている。農民はのどかに草刈をしている。そして、スペイン国境にナチスが侵入した、という新聞記事のカットが挿入される。

しだいに赤ん坊の出血は広がり、ベビー服が血で滲(にじ)んでいく。黒猫が心配そうな表情で赤ん坊の様子をうかがう。農民は一斉に赤ん坊のもとに駆けつける。何とか一命をとりとめた赤ん坊に対し、子守唄がささげられる。♪私の愛しい子よ、よくお眠りよ…♪ そして1940年6月28日付の新聞のカットが挿入される……。この映画のスペインの田園風景はすばらしい。静寂の中、時を刻む音が印象的だ。やはり、エリセは大戦直前の平和のなかの一抹の不安を表現したかったのだろう。

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「人生のメビウス」第4話は、ジム・ジャームッシュの「女優のブレイクタイム」(原題=夜のトレーラー)。撮影現場の近くのトレーラー内で休憩をとる女優ケイト(クロエ・セヴィニー)の10分間のもようを描いた。この作品は彼の「コーヒー&シガレッツ」にも通じるところがある。ケイトはトレーラー内でCDラジカセのクラシック音楽を聞きながら、タバコを吸いゆっくりとハイヒールを脱ぐ。休憩中でもヘアスタイリストや録音係、付き人が出入りし、心やすまるひまがない。「撮影は順調よ。あと、数日は出ずっぱりなの」などと言いながら愛人からの電話が唯一のなぐさめなのだろう。虚実の世界に生きる女優の断片、ひとときが上手く表現されている。「コーヒー&〜」もそうだが、ジャームッシュの″私小説的世界″を味わうことができる。

第5話はヴィム・ヴェンダースの「トローナからの12マイル」。ストーリーは誤ってドラッグを飲んだ男が病院に駆けつけたものの休診中で、あわてて12マイル先の病院へ行こうとと車を飛ばすのだが……。この作品でも、ヴェンダース映画「パリ、テキサス」と同様、冒頭にアメリカ国旗のカットが挿入される。本作で、ドラッグにおかされた男の運転するシーンの映像が凄(すさ)まじい。

とくに風力発電塔がいくえにも描かれる幻覚シーンは、ロック音楽とマッチしながら妖しくエキセントリックだ。人間死ぬ直前には、このような情景が脳裏をめぐるのかと思わせるほどのインパクトがある。結局、男は車を運転していた少女に助け出されるのだが、このようなハッピー・エンディングはヴェンダース映画ではめずらしいのではないか。何となく、伊オムニバス映画「世にも怪奇な物語」所収、フェリーニの「悪魔の首飾り」で主人公テレンス・スタンプが運転中、街路で少女に救いを請うシーンが思い出される。

画像「イデアの森」では、「ラスト・エンペラー」などの作品で知られるベルナルド・ベルトルッチの「水の寓話」が収められている。ストーリーはイタリアの片田舎で、笛を吹く老人に「水を汲んできてくれないか」と頼まれた男が、水を汲みに行く途中、女と知り合うのだが……。ベルトルッチは「1900年」や「リトル・ブッダ」など長尺ものが得意といった印象がある。この10分間の短編でも実質・内容的にかなりの長さを感じる。

主人公の男が女と出会った後、女の自宅へ行き、結婚し、子どもが生まれ、その後家族全員の乗った車が橋の上で事故を起こす。男は茫然自失の状態で、付近をふらふらしていると、笛吹きの老人に出くわす。老人は「兄弟よ、朝からずっと水を待っていたのだよ」と言う。男は老人にひざまづく。つまり、この老人は聖人を象徴し、凡人の数百日は聖人にとっての一日にしか過ぎない、とベルトルッチは言いたかったのではないか。

画像「イデアの森」第8話はジャン・リュック・ゴダールの「時間の闇の中で」。これはゴダールのこれまで撮った映画(ジャン・ピエール・レオ主演)やビデオなどが収められ、彼独自の映像を繰り広げている。ただ、近年から現在までのゴダール作品を筆者は支持していない。(唯一の救いは「決別」だ)初期の「勝手にしやがれ」や「女と男のいる舗道」「男性女性」「アルファヴィル」など、ヌーヴェルバーグ時代の作品は、革新的であったが分かりやすかった。今見てみると、トリュフォーもそうだが60年代の映像文化をはじめとしたカルチュアーは最高だったような気がする。

「時間の闇〜」は、若さや勇気、思考、記憶、愛、歴史、映画などの「最後の瞬間」と銘打った従来の方法で表記され、独特の映像が流れていく。特に印象的なのは、「思考の最後の瞬間」。数多くの書物が黒いごみ袋で捨てられる。また、「記憶の最後の瞬間」では、ゲシュタポで死体が運ばれる。ゴダールは、この記憶に時効はないと強調する。そして、冒頭の少女と老人の会話、「なぜ夜は暗いの?」「時代と共に暗くなってきたのだ」。ゴダールはこのことが最も言いたかったのではないだろうか。

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第7話は「イル・ポスティーノ」(94年)、「ヴェニスの商人」(04年)などを撮った英国人、マイケル・ラドフォードの「星に魅せられて」。この作品が全15編のなかで最も分かりやすい。中年の宇宙飛行士が飛行距離80光年の旅を終えて地球に帰還するというSF仕立てのストーリーだ。

飛行士は幼い息子マーティンの写真を絶えず持ちながら宇宙飛行を続けてきた。帰還したときの地球は西暦2164年。飛行士の肉体の検査が行われたが、彼の老化時間はなんと10分間だけだった。彼は自宅に戻り、マーティンと再会する。そこにいたのは100歳近くになった息子だった。マーティンは言う。「パパ、愛しているよ」。飛行士はまた宇宙飛行へとおもむく。このタイム・パラドックスが何とも言えない情感・哀感を表し、見るものの胸を締め付けることは必至だ。また、この作品に出てくる近未来風景も興味深い。

「10ミニッツ・オールダー」の全作品は次の通り。

【人生のメビウス】
@ アキ・カウリスマキ「結婚は10分で決める」
A ビクトル・エリセ「ライフライン」
B ヴェルナー・ヘルツォーク「失われた1万年」
C ジム・ジャームッシュ「女優のブレイクタイム」
D ヴィム・ヴェンダース「トローナからの12マイル」
E スパイク・リー「ゴアVSブッシュ」
F チェン・カイコー「夢幻百花」

【イデアの森】
@ ベルナルド・ベルトルッチ「水の寓話」
A マイク・フィギス「時代×4」
B イジー・メンツェル「老優の一瞬」
C イシュトヴァン・サボー「10分後」
D クレール・ドゥニ「ジャン・リュック・ナンシーとの対話」
E フォルカー・シュレンドルフ「啓示されし者」
F マイケル・ラドフォード「星に魅せられて」
G ジャン・リュック・ゴダール「時間の闇の中で」

[5段階評価]……☆☆☆☆

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15人の巨匠監督が「時」をテーマに10分間ずつの短編を製作したらしく、 2作品ある映画のうちの1つがこれです。 こっちには7つの短編が入ってます。 ...続きを見る
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2006/07/19 00:38
「10ミニッツ・オールダー」
7人の監督が一作品を10分で仕上げたオムニバス。 ...続きを見る
もじもじ猫日記
2006/07/19 23:50
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス
=2002年 イギリス/ドイツ/スペイン/オランダ/フィンランド/中国 = 「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」 ■ストーリー 世界各国の15人の監督が、時間をテーマに手がけた10分間の短編オムニバス作品集。 「10ミニッツ・オールダー 」は、「人生のメビウス」と「イデアの森」の2本ある。人生の意味を10分間の一場面に凝縮して描く。 ...続きを見る
+++映画の部屋+++
2006/08/12 17:07

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして、TBからお邪魔しました。
エリセの作品は長編で観てみたいと感じました。オムニバス物は出来にバラつきがあるものが多いですが、今作は監督個々の個性がせめぎ合う興味深い作品が多かったように思います。
此方からもTBお返しさせて頂きます。また宜しくお願いしますw。
lin
2006/07/17 20:35
>linさん、よーこそ、「シネ・ワン」の世界へいらっしゃいませ!!また、TB&コメントありがとうございました。

この映画で、ぼくはエリセの「ライフライン」が最も気に入っています。「エル・スール」や「ミツバチのささやき」もいいですよ。あと、ヴェンダースやラドフォード、メンツェル作品がよかったです。近年のゴダールは好きではないのですが、この「時間の闇の中で」は、さすがゴダールといった感じはありました。こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

それでは、また当ブログに遊びにきてくださいね!!
D.ギルモア
2006/07/17 22:48
TBありがとうございました☆私もTB返しさせていただきました!
オムニバスは楽しいのですが
よくわからなかった話も多かったので
参考になりました。
「コーヒー&シガレッツ」もいいですよね。
映画よく観てられるようですねーまた遊びにきます!
lycka
2006/07/19 00:42
>lyckaさん、よーこそ、「シネ・ワン」の世界へいらっしゃいませ!!また、TB&コメントありがとうございます。

この映画は、確かにおっしゃる通り、よく訳の分からない作品がありましたよね。しかし、ジャームッシュの「女優のブレイクタイム」は、何となく「コーヒー&シガレッツ」を思い出させ、好感がもてました。

それでは、またぜひ当ブログに遊びにきてくださいね!!
D.ギルモア
2006/07/19 21:38

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