「トリコロール」三部作で知られるポーランド出身の名匠、クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿シナリオを完全映画化したラブ・ロマンス「ヘヴン」(2001年、米英仏独、97分、シドニー・ポラック製作総指揮、トム・ティクヴァ監督、MIRAMAX配給)。この映画は、殺人犯の女囚と刑務官のラブ・ストーリーを描くことで真実の愛とは何かを追求している。また、全編に流れる特殊空撮システム「スペース・カム」を用いた映像が美しく、見るものに感動を与えてくれる。物語はイタリア・トリノで、女性英語教師であるフィリッパ(ケイト・ブランシェット)が夫を死に至らしめ、教え子らを不幸に導いた麻薬密売人を殺害するため、同密売人が会長を務める会社がある高層ビルに時限爆弾を仕かけた。しかし、密売人は死なずに、何の罪もない4人が犠牲者となってしまったのだ……。 さて、ここで本作をストーリーの構成にしたがって見ていこう。まず、序盤だが、冒頭で憲兵隊・刑務官フィリッポ(ジョヴァンニ・リビシ)のヘリコプター・シミュレーション装置を取り扱うシーンから始まる。これは、ラストシーンとリンクするのだが、同刑務官は上官に聞く。「高度に限界があるようですが、どれくらいまで昇れますか?」。 そして、場面は変わりフィリッパのアパートで、彼女は爆弾装置をセッティングしている。やがて、古風な建物が並ぶトリノの街中が映し出される。やはり、イタリアである。伝統的な建物群が実にすばらしい。さらに、それらと高層ビルとの対比は見事だ。やがて、フィリッパはビルを爆破し、4人を殺害した疑いで憲兵隊に逮捕される。取調べ中、女囚フィリッパは目的の密売人を殺害できず、罪のない4市民の犠牲者を出してしまったことに驚き失神する。青年刑務官フィリッポは彼女の手を握りしめる。ここが本作ラブ・ストーリーの男女の出会いのきっかけである。同刑務官は、その日自宅に戻り、ベッドの上で「恋に落ちた」と独白する。さらに、彼の手のアップシーンを映し出すことにより、彼女の感触が忘れないことを表現し、男女の運命的な出会いを象徴させている。 恋に落ちた刑務官は女囚の脱走を企てる。一方、検事らは女囚に対し、背後にいるとみられるテロ組織について執拗に尋問する。途中で挿入されるスペース・カムを使ったレンガ色の街並みシーンがとてもきれいだ。刑務官は女囚にそっとテープ・レコーダーを手渡し、脱走の手順を指示する。その手順は作劇的に緻密に計算されている。しかし、刑務官は脱走劇のなかで手順通りには実行しなかった。その理由を「計画には予期しないことが起こるからさ」と言う。やがて2人は、憲兵隊建物の屋根裏に身をかくし、密売人を憲兵隊本部長オフィスまで呼び出し、女囚は本部長をけん銃で殺害する。このあと、女囚の空しさを上手に演出している。翌朝、屋根裏で目を覚ました2人。トイレに行った女囚のあとに、2人の掃除婦がやって来る。女囚が見つからないかとハラハラ・ドキドキする。良質なサスペンス映画としての要素が十分である。 中盤に入り、2人はごみ運搬車にかくれ、憲兵隊建物を脱出する。ここから、2人の″自分探し″のロード・ムービー、逃避行が始まる。2人はそれぞれ自己紹介する。たどり着いた農村の田園風景がすばらしい。村の教会で、女囚は自らの行いをざんげする。そして、「私は信じる心を捨てたの」と告白。刑務官の「何を信じる心?」の質問に対し、女囚は「良識や正義、生きていくことを信じる心を捨てたの」と言う。主題に直結する重要なセリフだ。そんな彼女に刑務官は愛を打ち明ける。しかし、やがて彼女は「私は終わりを待っているの」と、うつろな表情で言う…。終盤で、2人は女囚の友人の家を訪ねる。折りしも結婚披露宴が行われていた。イタリアの結婚式というと、コッポラ作品でマーロン・ブランドの「ゴッドファーザー」(1972年)を思い出してしまう…。やがて、電話で呼び出された刑務官の父親が同地に駆けつける。父は女囚に対し、「息子はあなたのことを愛しているが、あなたはどうなのか」と聞く。彼女は間をおいて、愛していますと答える。ここで、中盤から終盤に入り変化した彼女の真情が読み取れる。 そして、友人宅の周囲を散策する2人。丘の上の大木の所で、2人は衣服を脱ぎ抱き合う。背景の夕陽がきれいで、とても印象的なシーンだ。ストーリー的にもカタルシスのある場面だ。翌朝、憲兵隊のヘリと何台もの車が友人宅へと集まってくる。二人は家を出て、憲兵隊員のすきを見計らって、ヘリに乗り込み離陸する。憲兵隊員らは地上から発砲する。ヘリは高く高く舞い上がり、小さくなってやがて見えなくなる。タイトル通り、ヘヴンに向かったのだろうか。そして、エンド・クレジットを迎える……。この映画は、自分の存在理由がこの女性であることを直感した男と、いかにして愛を取り戻すかが命題の女とのストーリーを通して、純粋な愛とは何かを見るものに対して、静かにそして力強くうったえかけている。 [5段階評価]……☆☆☆☆ ヘヴン 特別版
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ヘヴン
ヘヴン監督:トム・ティクヴァ出演:ケイト・ブランシェット , ジョヴァンニ・リビージ , レモ・ジローネ , ステファニア・ロッカStoryキェシロフスキの遺稿脚本を『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督が映画化。イタリアを舞台に、.... ...続きを見る |
my life of my life 2006/10/02 01:35 |
『ヘヴン』 恋に落ちる瞬間 その2
脚本はこの場面から始まっていた。 脚本の1ページ目では緊張したこの女性が明らかに爆弾と分かるものを準備している。 部屋には危険と絶望が漂っているが、攻撃的な緊張感も満ちている。 どんな物語になるか、観客には見当もつかない。 脚本の冒頭の場面を読んだ私は、この女性に興味を持った。 脚本の描写から私が想像したのは、美しいが、思いつめた内向的な女性だったからだ。 この脚本が持つ不思議な魅力に、私はすぐとりこになり、共感した。登場人物だけでなく物語の着想や構造にもね... ...続きを見る |
海から始まる!? 2006/10/04 18:55 |
ヘヴン(2001)アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス Heaven
ヘヴン 特別版ケイト・ブランシェット トム・ティクヴァ ジョヴァンニ・リビージ ステファニア・ロッカアスミック 2003-11-14by G-Tools 「あなたは最後のシーンで何を思い浮かべますか?」 ☆5 ...続きを見る |
LOOP THE LOOP~映画・音楽の... 2006/10/08 00:25 |
ヘヴン
HEAVEN 2001年 米・独・英・仏・伊 ...続きを見る |
cinema note+ 2006/10/14 09:27 |
魂の双子〜『ヘヴン』
*内容に触れています* ...続きを見る |
真紅のthinkingdays 2007/04/06 01:20 |
ヘヴン
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サムソン・H・トマトマスバーガーの限りな... 2008/05/11 01:47 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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David Gilmourさま、こんにちは。TBさせていただいたのですが届いていないようですので、コメント失礼します。 |
真紅 2007/04/06 01:35 |
真紅さん、おひさです。 |
D.ギルモア 2007/04/06 21:32 |
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