23歳の若さでがんを宣告されたヒロイン、アン(サラ・ポリー)の生き様を綴(つづ)ったヒューマン・ドラマ「死ぬまでにしたい10のこと」(原題=My life without me、2002年、106分、スペイン・カナダ、イザベル・コヘット監督脚本、ペドロ・アルモドバル製作総指揮、ナンシー・キンケイド原作、ジャン・クロード・ラリュー撮影、アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ音楽)。この映画は、まるで黒澤明の「生きる」(1952年)のシチュエーションを意識したような作品となっている。死を目前にしたとき、人はどのように生きるのかをさりげなく描いている。物語は母親の家の裏庭のトレーラーで、夫ドン(スコット・スピードマン)と娘2人の4人で暮らすアンがある日、病院でがんの宣告を受け、余命2、3カ月と告げられる。アンはノートに死ぬまでにしたい10項目をメモし、実行していくのだが……。 ここで、本作をストーリーの構成にしたがって見ていこう。まず序盤だが、冒頭アンの雨の中のシーンから始まる。「雨を感じる。生命のにおいがする」というモノローグ(独白)は詩的でロマンティックだ。そして、アンの仕事やパン屋で働く母親(デボラ・ハリー)、失業中の夫、2人の娘のことなど日常生活についての説明的描写が行われる。どこにでもあるような家庭をさりげなく演出している。リアリティがあり、説得力十分である。やがて、ある日アンは倒れる。病院で検査を受け、卵巣に腫瘍(しゅよう)ができ胃に転移し、余命2、3カ月であることが担当医トンプソン(ジュリアン・リッチングス)によって知らされる。この医師の役者はかなりの性格俳優な感じがする。絶望感に打ちひしがれたアン。雨に打たれるシーンは、絶望感をさらに醸(かも)し出している。 中盤に入り、アンはコーヒー・ショップで、死ぬまでに娘たちを海に連れていくことや、ヘアースタイルを変えること、刑務所にいる父親に会いに行くこと、愛人をつくることなど10項目のしたいことをノートに綴る。アンは美容室に行き、髪形やネイルについて美容師に相談する。そして、ラウンジに行きラガー・ビールを注文する。そこで、再び美容師と会うことになる。その晩、アンはコイン・ランドリーで測量技師のリー(マーク・ラファロ)と出会う。アンは疲れきってソファーの上で寝てしまう。心配そうにアンの寝顔を見つめるリー。センスのある音楽とあいまって、このシーンの映像はとても美しい。やがて、アンは目を覚まし、リーの存在に気づく。帰宅後、アンは洗濯袋の中にリーがくれた一冊の本を発見する。 アンは商店街をさまよう。「私が死んだあとも、商品は並び続けるのね」というモノローグは説得力がある。そして、アンは車の中で娘ペニーとパッツイーへ、自分の死後のためにメッセージをテープ・レコーダーに録音する。やはり、ここが中盤における一つのヤマ場である。娘たちにこれから送る誕生日に「ペニー、妹の面倒をみてね」「17歳のとき、私は結婚したのよ」などと、熱いコメントを吹き込む。かなり涙腺を刺激するシーンである。やがて、アンはリーの自宅を訪れる。家具が一切ない殺風景な室内だ。そして2人は車内でリーの姉から送られた音楽テープを聴きながらキスをする。切ない状況のなかでの、一筋の希望を見出すシーンである…。その後、アンは病院で娘たちへの録音テープが入った包みを担当医に手渡す。帰路、スーパーマーケット店内をさまよう。客や店員らが踊りだす幻想シーンが挿入される。まるで、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見ているような雰囲気だ…。帰宅後、夫ドンは「君と出会えて幸せだった、たとえトレーラーの生活でも」と真情を告白する。ドンのアンに対する愛情が、ひしひしと伝わってくる。この夫の善人であるキャラは好感がもてる。 終盤で、アンは仕事中のリーとデートする。スペイン語の歌が流れるなか、2人はダンスする。帰宅してアンは隣に引っ越してきた女性とコーヒーを飲む。女性は看護師で、昔シャム双生児の出産に立会い、30時間後に双生児が死亡したと打ち明ける。アンはその話を聞いて涙を流す。アンにとっては、むごい話で、アンの悲惨な状況をたたみかけるようなストーリー展開だ。♪私の愛を決して疑わないで。それだけは本当に信じて♪の歌声が流れるなか、アンは刑務所にいる父親に会いに行く。面会室でアンは窓越しに娘の写真を見せる。また夫のことなどについて話す。父親の自らの経験をふまえてのセリフ、「世の中には相手が望むような生き方ができない人間もいる」が印象的だ。 ドンや母親へのメッセージも録音したアンは、リーと車で港近くのレストランへ行く。途中、アンは83歳にもかかわらず現役で歌っている女性ジャズ歌手の話をリーから聞き感心する。レストランでリーは、「君とずっと一緒にいたい」と告白。そして、これは古典的な恋愛だとも。何となく、リーの気持ちが理解できる。2人が別れた後、リーはアンの夫が迎えにくるのをじっと見守る。「マディソン郡の橋」のノリである…。やがて、アンはリーに対してもメッセージを吹き込む。「失われた人生に何の未練もないわ。しかし、私も短い時間だったけど、あなたに恋に落ちたわ。人生は案外、素敵ね。あなたとのダンス、楽しかったわ…」。この映画は、黒澤明の「生きる」とシチュエーションがよく似ているが、黒澤作品のような男性的で、哲学的な深みはない。しかし、原作者や監督が女性であることなどから、女性特有のきめ細やかな部分が見受けられる。また、ヒロイン・アンを通じて、1人の女性であることと、さらには<限りない母性>を感じてしまうのだ。 [5段階評価]……☆☆☆ 死ぬまでにしたい10のこと
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死ぬまでにしたい10のこと
今日は短めの映画をと思って探したら103分のがあったのでチョイス。サラッと観る分には良さそうなテーマだし、ちょうど良かったかな。23歳のヤングママが、死を宣告されてから、これからしたいことをリストにする。 ...続きを見る |
しーの映画たわごと 2006/10/11 08:52 |
#560 死ぬまでにしたい10のこと
製作:エステル・ガルシア、ゴードン・マクレナン 製作総指揮:ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル、オグデン・ガヴァンスキ 監督:イザベル・コヘット 原作:ナンシー・キンケイド 脚本:イザベル・コヘット 撮影:ジャン・クロード・ラリュ 音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ 美術:キャロル・ラヴァレー 編集:リサ・ジェーン・ロビンソン 衣装(デザイン):カティア・スタノ 出演者:サラ・ポーリー 、マーク ラファロ 、スコット・スピードマン 、レオノ... ...続きを見る |
風に吹かれて-Blowin' in th... 2006/10/11 13:26 |
独断的映画感想文:死ぬまでにしたい10のこと
日記:2004年11月某日 映画「死ぬまでにしたい10のこと」を見る. 2002年.監督:イザベル・コヘット.制作は「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル. 原題は「私のいない我が人生」,題名か ...続きを見る |
なんか飲みたい 2006/10/11 22:54 |
死ぬまでにしたい10のこと
【MY LIFE WITHOUT ME】2002年/カナダ 監督:イザベル・コヘット 出演:サラ・ポーリー/マーク ラファロ/スコット・スピードマン ...続きを見る |
BLACK&WHITE 2006/10/11 23:32 |
死ぬまえにしたい10のこと(02・スペイン・カナダ)
こんな生き方は私にはできない、と思った。 こんな死に方もできない、と思った。 でもそれは違うと気付いた。 ...続きを見る |
no movie no life 2006/10/12 00:10 |
死ぬまでにしたい10のこと
彼女は23歳。あと2ヵ月の命。初めて「生きる」と決めた。 2003年カナダ/スペイン 監督 イザベル・コヘット ...続きを見る |
レンタルだけど映画好き 2006/10/12 00:34 |
死ぬまでにしたい10のこと 〜DVDにて〜
死ぬまでにしたい10のこと ・・・評価 3 ...続きを見る |
三日月のしっぽ。 2006/10/12 12:37 |
死ぬまでにしたい10のこと
イザベル・コヘット監督作品(2002年・スペイン=カナダ) 原題は”My Life Without Me”。ペドロ・アルモドヴァル製作総指揮でレオノール・ワトリング、レオ様が出演しているという理由で観てみた。主人公アンの隣人アン役(ややこしいが同じ名前)のレオ様はベリーショートの髪型、かつお太りになられたようで、『トーク・トゥ・ハー』の衝撃がやや冷めてしまった。 ...続きを見る |
CINEMA IN/OUT 2006/10/12 23:31 |
死ぬまでにしたい10のこと・・・・・・・・・
死ぬまでにしたい10のこと なんとなくタイトルが気になって借りてみた 「死ぬまでにしたい10のこと」 感動系の映画なのかなぁ? さてさて ...続きを見る |
サクサクっと・・・ 2006/10/13 23:28 |
死ぬまでにしたい10のこと
死ぬまでにしたい10のこと レンタルではいつも貸し出し中だったので、見るのをすっかり忘れていた。でも、観て良かった。 ...続きを見る |
cinema note+ 2006/10/14 09:25 |
死ぬまでにしたい10のこと
死ぬまでにしたい10のこと ...続きを見る |
阿部健一郎BLOG Comedian o... 2006/10/14 10:51 |
死ぬまでにしたい10のこと
【2003年10月25日劇場公開】 【ジャンル:ドラマ】 【観た場所:レンタル・DVD】 面白かった度:★★★★ オススメ度:★★★★ もう一度観たい度:★★★ ...続きを見る |
琴線〜心のメロディ 2006/10/14 22:58 |
「死ぬまでにしたい10のこと」 (2002)
死ぬまでにしたい10のこと ...続きを見る |
とりあえず生態学+ 2006/10/15 01:45 |
「死ぬまでにしたい10のこと」
このDVD、TSUTAYAに行く度に借りようと思っても貸出中だったぁ。 やっとひらりんの番が回ってきた・・・という感じ。 新年早々「死ぬまで〜」なんて縁起がわるいかなっ。 ...続きを見る |
ひらりん的映画ブログ 2006/10/15 02:55 |
映画鑑賞感想文『死ぬまでにしたい10のこと』
さるおです。 『MY LIFE WITHOUT ME/死ぬまでにしたい10のこと』を観たよ。カナダ発、優しくせつない人生の物語。 監督は、カタルーニャ(スペイン)生まれのイザベル・コヘット(Isabel Coixet)。 出演は、『THE ADVENTURES OF BARON MUNCHAUSEN/バロン』『EXOTICA/エキゾチ.. ...続きを見る |
さるおの日刊ヨタばなし★スターメンバー 2006/10/15 22:42 |
★「死ぬまでにしたい10のこと」、男性諸君!刮目せよ★
「死ぬまでにしたい10のこと」(2003) カナダ/スペイン MY LIFE WITHOUT ME 監督:イザベル・コヘット 製作:エステル・ガルシア ゴードン・マクレナン 製作総指揮:アグスティン・アルモドバルペドロ・アルモドバル オグデン・ギャヴァンスキー 脚本:イザ.... ...続きを見る |
★☆カゴメのシネマ洞☆★ 2006/10/23 22:43 |
死ぬまでにしたい10のこと
脚本仲間が良かったと言っていたので。 人は自分に死が宣告されたらどうするのだろう? ということにもちょっと興味がありました。 DVDで鑑賞。 ...続きを見る |
映画、言いたい放題! 2007/10/31 17:01 |
死ぬまでにしたい10のこと:映画
今回紹介する映画は、イザベル・コイシェ、コヘット監督作品を紹介します。 だれもにいずれ訪れる死をテーマにした作品「死ぬまでにしたい10のこと」です。 まずは映画のストーリーから・・ 23歳という若さで、がんで余命2か月と宣告されたアン。 彼女はやり残したことをノートに10コ、書き留める。 オシャレのこと、ふたりの娘のこと、そして夫以外の男と付き合ってみること…。 リストを作ったときから、アンの平凡だった人生がイキイキと動きだした。 ...続きを見る |
ジフルは映画音楽札幌グルメ紹介 2007/12/05 03:54 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
こんにちは。TBありがとうございました。 |
chibisaru 2006/10/11 14:03 |
TBありがとうございました. |
ほんやら堂 2006/10/11 22:59 |
>chibisaruさん、こんばんは。 |
D.ギルモア 2006/10/12 01:29 |
>ほんやら堂さん、こんばんは。いつもお世話になります。 |
D.ギルモア 2006/10/12 01:37 |
サラ・ポーリーの目がとっても良かったのを憶えています。子供を見つめる目、夫を見つめる目、どこか遠くを見つめる目…良い役者だと思います。 |
trichoptera 2006/10/15 01:47 |
>trichopteraさん、よーこそ、「シネ・ワン」の世界へいらっしゃいませ!! |
D.ギルモア 2006/10/15 07:12 |
原題の「My life without me」が劇中出て来る所で、ハッとした途端、涙が溢れました。 |
カゴメ 2006/10/23 22:48 |
>カゴメさん、こんばんは。毎度です。 |
D.ギルモア 2006/10/24 00:38 |
ご無沙汰しております! |
ちゃーはん 2007/03/21 02:03 |
やあ、チャーちゃんおひさ!! |
D.ギルモア 2007/03/21 03:24 |
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