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help リーダーに追加 RSS 「アクロス・ザ・ユニバース」

<<   作成日時 : 2009/01/13 19:22   >>

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画像全編33曲のビートルズ・ナンバーから構成する異色の青春ミュージカル映画「アクロス・ザ・ユニバース」(2007年、米、131分、コロンビア映画配給)。かつて、同じくビートルズのカヴァー曲を取り入れたドラマ、ショーン・ペン主演の「アイ・アム・サム」があったが、本作はそれよりも躍動感において優れており、1960年代のベトナム反戦状況などを背景に映画・音楽ファンを魅了する作品となっている。撮影監督は「アメリ」のブリュノ・デルボネルで、随所に表れるシュールな映像が特徴。また本作の監督は、「ライオンキング」の舞台演出を手がけた女流監督で、ポスト団塊世代のジュリー・テイモア。音楽的かつドラマとして十分楽しめる一品だが、果たして真のビートルズ・ファンを納得させるものかどうかは疑問の余地を残すところだ。

物語は60年代の英国リバプール造船所で働く青年ジュード(ジム・スタージェス)が父親を捜すため渡米。そこで大学生のマックス(ジョー・アンダーソン)と知り合い、ニューヨークのグリニッジビレッジで音楽仲間らと共同生活を開始する。ジュードはマックスの妹ルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)と恋に落ちる。やがて、マックスはベトナム戦争に徴兵され、ジュードも英国強制送還の危機に。そんな中、ルーシーは反戦運動の中にのめり込んでいくのだが……。

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この映画の構成は、ジュードとルーシーのロマンスを縦軸としながら、横軸にベトナム戦争および反戦運動や、ドラッグをコアとしたサイケ社会など60年代当時の米国世相を配置するといった内容だ。また、ビートルズ映画や楽曲のパロディをふんだんに取り入れてているのも特徴だ。

冒頭、リバプールの浜辺でジュードが「ぼくの話を聞いてくれ」といった意味で「ガール」をうたい上げるところから始まる。米国に着いたジュードはマックスらと知り合うが、ボーリング場でレーンを走り回ったりしてミュージカルを展開する場面はなかなかいいシーンだ。やがて、ジュードらはNYへ行き、女性歌手セディらと交流をもつ。途中でデトロイト暴動のシーンをはさむが、ここでの黒人少年がアカペラで歌う「レット・イット・ビー」が印象的だ。

NYの街角で、ホームレス男が「カムトゥゲザー」を熱唱する。どこかで覚えのある顔・声だと思っていたら、あの「ウッドストック」(シネ・ワン記事参照)に出演していたロック歌手、ジョー・コッカーだった…。ジュードらとの共同生活者となる女性プルーデンス。彼女の出現の仕方は突飛だ。歌詞そのままに、「シー・ケイム・スルー・ザ・バスルームウインドウ」。余りにもとってつけたようなこじ付けだ。

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やがて、マックスにベトナム戦争の召集令状が届く。ジュードとルーシーがベッドインしているのを横目にしながらマックスの言うセリフ「おれはこれから国家とデートしなければならない」が面白い。また徴兵検査の場面の歌と踊りは、いかにもミュージカルシーンを繰り広げている感じで見ていて楽しい。

一方、これに対し画面では反戦運動や、60年代特有のサイケデリック社会を映し出す。ドラッグ世界であるサイケパーティーが終わり、ジュードらがDr.ギアリー宅へバスで向かうシーンは、ビートルズ映画「マジカル・ミステリー・ツアー」のパロディである。フィルムを露出オーバーさせ、幻想的な雰囲気をかもし出している。ギアリー邸での奇妙なショーは、まるでフェリーニのような世界だ。そして、屋外の草むらの中でジュードをはじめとした共同生活者らが「イット・メイクス・ミー・クライ」などと熱唱する「ビコーズ」。静謐(せいひつ)で一抹の空虚さを漂わせている。これは、当時の世相に対する静かなレジスタンスを表現しているように見えなくもない。

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やがて、デモ行進やベトナム戦争の映像が流れた後、酒場でセクシー・セディと黒人ギタリストのライブ「オー、ダーリン」が展開する。このシーンは圧巻だ。また、この2人のロマンスも1つの軸となっている。やがて、ジュードは自宅で「ストロベリーズ・フォーレバー」が流れる中、イチゴを描く。このイチゴは血を表し、ベトナム戦争下のナパーム弾を象徴させている。そういえば、かつて米国大学生の学園紛争をテーマにした映画「いちご白書」という作品があった。

ジュードはルーシーの反戦活動に批判的な保守主義者だ。他方、ルーシーはジュードの姿勢について「あなたは、この革命のさなかにお絵かきしている。もしもここに、爆弾が落ちたらあなたにも分かるわ」と強調。こうしたやりとりに落ち込んだジュードのブルーな気分を「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」が拍車をかける。

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そして、反戦活動で逮捕されたルーシーや、戦争現場から帰還したマックス、強制送還命令を受けたが、また米国に戻ってきたジュードらが一堂に集まりビルの屋上でコンサートを開くラストシーン。これもビートルズ映画「レット・イット・ビー」のパロディである。「ドント・レット・ミー・ダウン」を演奏し、無許可で開いたことで警官らが集まってくる。最後にジュードは「愛こそすべて」を歌う。♪All You Need Is Love♪ 「愛さえあれば何も要らない」が本作のテーマなのだろう。

ジュリー・テイモア監督は本作について、「コンセプトは、歌詞で物語を語ること。歌が台本であり、旋律であり、登場人物の感情でもある」と話しているという。確かにそれは分かる。また全編ビートルズの代表的な楽曲が流れ、懐かしく楽しい気分にさせてくれることは確かだ。ただ、ビートルズファンからすると、通りいっぺんを描いたに過ぎず、またドラマとしても薄っぺらな感じで深みがない。ジュリーの描くビートルズ世界とは、この程度のものなのかという気がするのだ。

[5段階評価]……☆☆★

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The Beatles The Long and Winding Road<You Tube>
(映画「レット・イット・ビー」より)
http://www.youtube.com/watch?v=COMsKPeWAsw
http://www.youtube.com/watch?v=j9SgDoypXcI
http://www.youtube.com/watch?v=X_YQ9ROp4lE
http://www.youtube.com/watch?v=DJo_YEbiBv8

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^今頃ですが、ギルモアさんの
年間ベストに気がつきましたので、そちらも
TBさせて頂きました!
昨年はTB・コメントと大変お世話に
なりました。今年も、どうぞよろしくお願い
致します(^_-)-☆

さて、この作品なんですが、ミュージカルは
苦手な私でしたが、全編ビートルズの曲と言うことでは楽しめました♪
ですが、長いと感じてしまったのは、ストーリーがいまひとつだったからのかな(^_^;)

>通りいっぺんを描いたに過ぎず、またドラマとしても薄っぺらい感じで深みがない。

結構辛口発言ですね(笑)でも、そうであったから、私も感動がイマイチだったのかも
しれませんね(^^ゞ
ひろちゃん
2009/01/14 00:56
>ひろちゃん、こんばんは。こちらこそ、昨年はいろいろとお世話になり、ありがとうございました。今年もよろしくね

うんうん、たしかにビートルズナンバー満載で、それなりに十分楽しめるのだけど、ストーリー性って意味では、なんかイマイチだったよね

すんまそ〜ん、なんか辛口発言をしてしまって(笑)でも、これはぼくがビートルズファンだからなんだよ、てなことを言ったりなんかして

D.ギルモア
2009/01/14 02:09
はじめまして。
「さむこの部屋」のさむこです。
TB&コメントありがとうございました。

この作品、見終わった時はストーリーが退屈に感じたのですが、映像の印象がとても強くて、見終わってだいぶ経った今でも、色々なシーンが鮮明に思い出されます。

私はビートルズにそれほど詳しくないので楽しめなかったと思ったのですが、ファンの方でも不満を述べる方が多いようですね。
彼らが実際に活躍していた時の世界の熱狂ぶりを体験してみたかったです。

ではまた遊びにきますので、これからもよろしくお願いします^^
さむこ
2009/03/10 00:32
>さむこさん、よーこそ、シネワン・ブログへいらっしゃいませ!また、こちらこそ、トラコメ感謝です

そうですね、おっしゃる通り、ストーリー性や映画としては、かなり物足りなかったのですが、映像的にはかなり、インパクトのあるシーンがありましたよね。特に水中シーンは幻想的で、想像力を喚起するものがありました

ただ、ぼくがこんにちあるのは、ビートルズのおかげ、と思っているくらいの熱狂的なビートルズファンなので、安直なビートルズ映画のパロディなど不満が残りました

でも、全編33曲のビートルズ・ナンバーがあってよかったかなあ、なんてことを思ったりしました。ビートルズが駆け抜けた60年代から70年代の初期ってカウンター・カルチャー的に素晴らしい時代だったと考えています

それでは、さむこさん、ぜひまた当ブログに遊びにきてくださいね
D.ギルモア
2009/03/10 04:26

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